嘗て「東京人」という雑誌で「東京を読む。」という特集が組まれていました(1994年4月号)。
そこで、「江戸」の項目を担当された北原 亜以子さんが、江戸の町を散策するための3種の神器として挙げていたのが、下記です。
「名所江戸百景」 歌川広重 安政三(1856)年~五(1858)年
「江戸名所図会」 斎藤幸雄、幸孝、幸成(月岑) 天保七(1836)年
「江戸切絵図集」
1990年代半ばに、古本で手に入れた「別冊宝島51 東京の正体!」(榎並重行、三橋俊明 共著 1986年2月25日 JICC出版局発行)という本に出合ったことがきっかけで、文学作品などを読む際に地名を強く意識し、爾来、興味をもった場所に実際に行って歩いてみる楽しみに目覚めました(渋谷をめぐる大岡昇平の「幼年」「少年」の記述が印象深い)。
私の住まいは横浜市内ですが、東京は近く、よくいくこともあり、先の3種の神器も是非、手元に置きたいと望んでいましたが、 「江戸切絵図集」のみ長らく入手できずにいました(注1)。先日、早稲田にある五十嵐書店(注2)さんで ちくま学芸文庫版で「江戸名所図会」と合わせて入手することができました。
下記、9冊で1996~97年発行
江戸名所図会 巻之一~六
別巻一 江戸切絵図集
別巻二 江戸名所図会事典
(注1)
「名所江戸百景」は、「古地図ライブラリー3 」の「江戸切絵図で歩く広重の大江戸名所百景散歩」(1996年 4月1日 株式会社人文社発行)で、出版された時期に買いました。
・A4サイズ(297mm×210mm)で絵が見易い大きさ。
・広重の浮世絵と該当する「江戸切絵図集」が、見開きで対照でる。
・東京の地図に該当する浮世絵の番号が1~119まで振ってあり、どこの絵であるか探し易い。
と工夫されていて、優れた本だと思うのですが、残念ながら出版社が2013年に廃業してしまい、古書でしか手に入らないようです。
「江戸名所図会」の6巻は、角川文庫版で既に持っていました。
昭和四十二(1967)年に発刊、平成元(1989)年に「リバイバルコレクション」として再刊。
こちちらも、古書でしか入手できませんが、1996年からより新しい、ちくま学芸文庫版がでたこともあるからか、全巻揃っていても、比較的安く入手できるようです。
谷沢永一著「紙つぶて(全)」に収録されている「謙虚で行き届いた名作解説の模範」の、
綺堂は病中つれづれの間に「江戸名所図会」を読み耽り、失われたこの世界の情緒を描き残す方法はないものかと思案し、半七捕物帳の構想を練ったという。江戸通の三田村鳶魚は、当時の庶民生活を説明するのに、黙阿弥の「髪結新三」と綺堂の「権三と助十」を例に引くのを常とした。
を読んで以来、「江戸名所図会」は手元に置きたいと思っていました。
「髪結新三」は舞台で何度か見ていますが、最近では、2024年8月の歌舞伎座の第二部で、中村勘九郎の新三が、声が亡くなったお父さん(勘三郎)そっくりで、胸を打たれました。
家主 「お前、うるせえな」
新三 「うるさかったのは、おやじのほうだ」
といった捨て台詞があり、客席の温かい笑いを誘っていました。この芝居を見た後は、鰹を食べたくなりますが、やはり、捨て台詞で、飲んでいるお酒の銘柄を「剣菱」と答えるところがあり、剣菱も飲みたくなってしまいました。
「権三と助十」は未見でしたが、2024年10月の歌舞伎座の昼の部で「権三と助十 神田橋本朝裏長屋」公演されるので見に行きます。
(注2)
現金以外に、交通系ICとクレジットカードでの支払いも対応していました。
購入時に9巻がまとめて、ビニールで包装されていましたが、このままだと鞄に入らないので、2つに分けて頂けないか相談すると快く対応して頂けました。
https://www.oldbook.jp/abouts/
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